自転車活用推進研究会


報告書

報告書2003


報告書2003「『2025年、25%計画』の展開に向けて」

今回の報告書では、3年間にわたる当研究会の活動をもとに、走行・駐輪空間の確保、交通安全と製品安全の確保、利用促進のための優遇措置、利用者への教育・啓発の徹底など、自転車が抱える諸課題に対して、7分類35項目の提言を掲げた。

また、新たに、自転車の活用推進に向けた総合的取組みとして「2025年、25%行動計画」を提唱した。これは、現在15〜16%にまで落ち込んでいる自転車と公共交通機関の交通分担率を、2025年時点で25%まで高めることを目標とする国民運動への呼びかけである。当研究会では、この国民運動を「25・25(ニコ・ニコ)計画」と命名した。

〈別表〉 交通分担率(全国、平日)
 自転車クルマ公共交通(鉄道・バス)その他(徒歩・自動二輪)
1987年(参考)17.1%39.3%16.2%27.6%
1999年(基準年)15.4%43.2%16.3%21.9%
2008〜2012年(中間目標)20.0%
〈4.6UP〉
35.0%
〈8.2DOWN〉
20.0%
〈3.7UP〉
25.0%
〈4.1UP〉
2025年(25・25計画)25.0%
〈9.6UP〉
25.0%
〈18.2DOWN〉
25.0%
〈8.7UP〉
25.0%
〈4.1UP〉

(1999年と1987年の分担率は、都市計画中央情報センターの「全国都市パーソントリップ調査」代表交通手段構成の数値を利用した)

研究会提言
  1. 自転車政策の総合化と一元化
    • ①新法では自転車を「環境」「経済」「健康」に適した「交通手段」(4k)として明確に位置づけたうえ、自転車の利用促進を目的にした国レベルの総合計画を策定するよう義務づける
    • ②上記総合計画には、「利用促進」「走行環境整備」「交通安全」「放置対策」のすべてを盛り込む
    • ③自転車担当主務大臣を任命して、関係省庁(内閣府、国土交通省、経済産業省、環境省、文部科学省、厚生労働省、総務省、警察庁など)の自転車施策を調整するポジションを規定し、その部署の予算と権限を明確にする
    • ④地方公共団体は国の総合計画に沿って、地域の実情に応じた総合計画を策定することができる
    • ⑤新法には達成目標年次交通分担率を明記し、順次見直していく
    • ⑥新法は時限立法とし、情勢の変化に伴い新たな法律に引き継ぐ
  2. 道路の再配分で走行空間を確保
    • ①原則車道走行に向けて、道路区分の再配分(クルマ、自転車、バスの共用)、および自転車走行区分の明確化
    • ②上記により、道交法第63条の4(普通自転車の歩道通行)の段階的廃止を検討
    • ③自転車、バス走行空間におけるクルマの駐停車と荷捌きの禁止
    • ④路上有料駐車施設(コイン式パーキングメーター)の廃止
    • ⑤市街地における車の速度を30km/h以下に制限
    • ⑥生活道路へのクルマの進入制限
    • ⑦道路上における歩行者・自転車に対するクルマ運転者の義務を自動車教習所等において徹底的に教育すること
  3. 放置誘因事業者に駐輪場設置を義務化
    • ①鉄道事業者の社会的責務として、駅前駐輪場設置の義務化を明記する
    • ②国は大量の駐輪需要を生じさせる施設の駐輪場設置を促進し、需要量を5年以内に充足させるため、土地の確保と駐輪設備の整備に80%以上の補助を行うこと
    • ③鉄道事業者は、自転車の利用促進と放置削減を図るため車内への自転車持ち込み制度を早急に検討し、実施すること
  4. 自転車通勤の奨励で活用推進
    • ①国および地方公共団体は自転車利用の利点と効用を具体的かつ明快に示すこと
    • ②国は自転車の走行環境を整備(第2章参照)しつつ、少なくとも自市区内では職場、学校へ直接、自転車通勤・通学するよう奨励すること(駅前放置自転車の削減にもつながる)
    • ③国および地方公共団体の職員は自転車利用を率先して実行すること
    • ④国および地方公共団体、企業はマイカー通勤から自転車通勤に切り替えた者に対し、通勤手当の割り増しなど経済的なインセンティブを与えること
    • ⑤国は自転車通勤者の所得控除(所得税減免)、自転車購入費用の控除など税制面での優遇措置の検討に取り組むこと
    • ⑥国および地方公共団体、企業は整備された駐輪場(シャワー、ロッカー、着替えスペースなどを備えた)を設置すること
    • ⑦国は上記整備された駐輪場を設置する企業に対し、優遇措置を与えること
    • ⑧鉄道事業者は自転車の車内持ち込みを促進するため、駅舎構造、車両編成(自転車専用車)などの変更に関する検討に取り組むこと
  5. 国の製品安全基準の早期確立
    • ①国は自転車の製品としての安全性を高めるため、関係機関による製品安全テストを実施し、不備が認められたときはこれを積極的に公表するなどの措置を検討すべきである
    • ②自転車の安全性を確保するため、国はJIS規格の安全性からの一層の改善に取り組み、製造・販売業界の自主的な努力がなおも不足している場合には、リコール制度の導入など新たに国レベルの自転車製品安全基準を検討すべきである
    • ③自転車を製造、販売、輸入する業者は購入者に対し、最低年1回の定期点検整備を勧奨すべきである。
  6. 放置・盗難に一元対応できる登録制度
    • ①防犯登録を改革し、電子情報として自転車の登録を行う者(非営利団体)を全国的な規模で整備する
    • ②登録情報は自治体と警察が共有することを原則とする
    • ③自転車登録に当たっては、自転車の製造、輸入、販売業者が打刻している製造番号を積極的に活用する
    • ④唯一固有の製造番号が流布するまでは、個別の登録番号を付与して電子情報化するが、中長期的には製造番号で所有者を特定するシステムを構築する
  7. 利用者の責務の明確化と教育・啓発の徹底
    • ①制定されるべき自転車新法には、自転車利用者の権利と義務を具体的に明記し、違反者には行政罰を科すべきである
    • ②小学校低学年のカリキュラムに、実地を含む自転車教育を加えるべきである
    • ③自転車購入時に自転車講習修了証の提示を求めるなど、事前のチェックを検討すべきである
    • ④公道上を安全に走行し、適切に駐輪することが自転車を利用する上で最低の責務であることを自覚させ、車両の定期点検・整備など応分の負担によりルールを守ることの重要さを徹底させるべきである

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